【不良基板の考え方】基板と“反り”の話

 本日は基板の“反り”について考えてみたいと思います。

 

 “反り”とは基板がZ方向に対して歪んでしまう現象の総称です。通常は反りの大きさは板厚まで、もしくはXmm以内等と基準を定めることが多いです。たかが“反り“・されど”反り“であり、”反り“は多くの問題を引き起こします。SMDが上手く実装出来ないこともありますし、筐体への組付けで問題が生じる場合もあります。一般的に反りは基板が大きいほど影響を受けやすいとされています。

 

 ”反り“は一回出てしまうと解消までの道が長いものですので、敢えて今回テーマにしてみることにしました。

 

 ”反り“の原因は大きく2つあります。それは「銅箔と樹脂のバランス」と「樹脂の硬化ムラ」です。一つずつ個別に考えていきましょう。

 

<銅箔と樹脂のバランス>

 基板の構成材料を大まかに分けると、基材(今回はFR-4とします)と銅箔になります。FR-4はガラス繊維に含侵させたものになります。ガラス繊維は現在、ムラなく作られているケースが多いので、物理的な形はほぼエポキシ樹脂に依存します。一方銅箔は銅パターンそのものとなります。エポキシ樹脂と銅箔は別の物体なので、当然熱に対する膨張率も異なります。これがバイメタルの原理で曲がりに至ってしまうのが一つのパターンです。銅箔の問題は割と厄介でベタの量、パターンの太さ、向きなどによって反りの出方は異なります。特に、片面の外層だけにベタが多かったとするとそれが反りにつながる可能性は非常に高いです。基板の層構成についてコア材を中心としてみた場合、Z方向に対してできるだけ対象にパターンがあることが望ましいのですが、パターンはそもそも物理的な強度を持たせるためのものではありませんので、難しいところではあります。銅箔が原因で反る場合には、再現性が高い不良となるケースが多いです。同じような方向に決まって反るような場合には銅箔を起因とする可能性が高いと思われます。頻度は低いですが、同じバイメタルの原理でレジストが反りの原因となるケースも考えられます。そのため、片面だけにレジストが必要な場合でも反り防止として敢えて両面にレジストをかけることがあります。

 銅のパターンは簡単には変えられないので、銅箔が起因で沿ってしまうようなケースでは、基板の面付数を減らしてーシートサイズを小さくする、捨て板部分に銅箔をつけて枠を強固にする(Vカットなどでは効果は限定的になります)等の対策が考えられます。

 

<樹脂の硬化ムラ>

 もう一つのよくある原因は樹脂の硬化ムラです。数々の反りを見てきた実感として、この問題は一般的に言われているよりずっと重い物だととらえています。一般に基板に使われるエポキシ樹脂は二液性のものが多く、主剤と硬化剤を利用しています。硬化剤が高分子同士を結合させる橋掛けポリマーを形成し、硬度が上がっていくというのが硬化の大きな仕組みです。これをバランスよく硬化させていないと、基板の内部に一部完全硬化していない領域が残ることになり、これが応力を生んで反りの原因となります。例えばリフロー時に熱をかけることで、被完全硬化の領域が硬化し、硬化した領域は収縮しますので応力を生んで反りにつながるといった具合です。この手の反りは銅箔を起因とする反りと比較すると再現性が高くないケースが多いです。もちろん、基板が大きい方が、長い方が影響を受けやすいので出やすい方向というものは存在します。

 基材も入荷時に完全硬化状態していない可能性も0ではありませんから、特に片面・両面板で反りを気にする場合には事前に基材をベーキングし、ゆっくり熱をかけてからゆっくり冷やすことで内部の応力を極力小さくしてから製造するケースが見られます。反り対策としてはかなり有効ですが、多層板では積層工程でどの道熱をかけることになりますので効果は限定的です。多層板の場合にどうしても反りを気にする場合には、基板製造後に一度熱処理をして応力をつぶす方法がとられるケースも存在します。但し、反りの為にここまで対応することは正直稀です。その他、少しTGが高い基材を使うことも対策になり得ます。リフロー等で熱をかけた時の影響をやや限定的にすることが可能だからです。

 

 反りについては、基板本来の回路としての機能からは少し離れた副次機能になりますから、少々の反りであれば手で曲げて直してしまったり、もしくはローラーに賭けてゆがみを矯正したりするケースも存在します。これらに効果が全くないとは思いませんが、上記のように、反りは物質特性に依存する傾向が強いため、血止め的に強制しても熱を加えてしまえば”反るものは反る”というのが実感でございます。

 

 弊社でも反りを始め基板に関わる事象については多くのノウハウがございますので、お困りの際には是非お声がけ頂けますと幸いです。

 

 

 本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。