近年の部品小型化、高密度化に伴い、熱への対応の重要性は増す一方です。
プリント基板はFR-4の場合、主要素材はエポキシ樹脂とガラス繊維、パターンは銅という形式が一般的です。熱に悩む昨今、基板自体の放熱効果も意識されることが多くなっていますが、基板の熱の関係は実際のところどうなのか?という話をしてみたいと思います。
基本的に基板の役割は電気的な接続であり、放熱を目的とした部品ではありません。只、熱の問題が重くなっている昨今ではPCB自体が持つ付帯的な放熱効果が注目される頻度も上がっておりますので、敢えて「熱」という観点から基板を見てみることにしました。
本日の内容はあくまでも自然対流(ファン等で強制的に空流を作って放熱しない場合)の目安です。実際の基板では部品密度も高くなり、部品配置や空流によっても大きく変わるものですので、あくまでも原則的な相場程度と思って頂ければ幸いです。
1.PCBの素材と放熱効果
FR-4の場合、基本的にはガラス繊維・エポキシ樹脂という絶縁材に銅の導体という構成になっていますが、銅の熱電動は約400W/m・Kであり、これはエポキシ樹脂やガラス繊維の約1000倍以上の熱の通しやすさです。プリント基板の放熱効果は銅によるところが大きいということです。
2.銅箔厚と放熱
サーマルビアを使うなどして、熱を逃がす設計はよく見られますが、放熱という観点では4層板以上では内層のグラウンドや電源といった銅箔が多く残る部分に熱が逃げることが多いです。表層の銅箔厚やパターンによって当然値は変わりますが、一般的によく使われる18μmと35μmの内層厚みで放熱効率を比べると概ね10%程度の放熱効果の差が出ることが多いと言われています。尚、銅箔厚と放熱性は比例関係であるわけではなく、厚みが増すほどにその効果は低減していきます。極端な話、数百μといった厚銅という設計をしたとしても、放熱効果は20%程度が限界になることが多いです。
3.銅箔専有面積比率と放熱
プリント基板は、配線パターンを描くため、当然ですが外層内層共にすべてが銅箔であることはありません。一般的な貫通基板では、樹脂に銅箔が前面について銅張積層板を用い、最終的には不要な銅箔部分をエッチングするサブトラクティブ法での工法が主流です。不要な銅箔を除去するので、放熱効果がある銅箔部分はエッチングした分小さくなっていきます。因みに、銅箔が1割程度しか残っていない基板とほぼベタで構成されているような基板の放熱効率の差は内層外層の条件等によりますが、10%~20%の熱抵抗の差が出ます。効果が出やすいのは内層よりも外層です。
4.サーマルビアの効果
熱が問題になる部品周りでは放熱を目的としたサーマルビアをうつケースがありますが、この効果について考えてみたいと思います。サーマルビアについては、放熱対象となる部品の特性や形状等によってかなり大きく変わるので、一概に数値を出すことは難しいのですが、十分にサーマルビアを確保した場合とそうでない場合には、10%から30%の放熱効果が見られます。サーマルビアは基本的に打った数に比例して線形に近い形で放熱効果が見られますが、ある一定数を超えると効果は一気になくなります。尚、サーマルビアの効果は銅箔厚が厚くなるほど高くなります。
以上のように本日は簡単に基板と熱の話をしてみました。弊社では基板設計から実装までワンストップでご対応しておりますので、一度御見積だけでも頂けると幸いです。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。