【鶏か卵か】次世代企業戦略におけるCSRの活用方法

 

 少し前に本ブログに掲載した「財務の仕組」の記事でゴーイングコンサーンという考え方を紹介しました。企業は、「経営を継続する」という本質的なミッションを抱えているという話です。

 

 

 

 もちろん、1企業という視点で考えれば、従業員・仕入先・お客様・株主のために、その会社は生存し続けなければなりませんし、当然、弊社もゴーイングコンサーンの前提に立っていることになります。ただし、企業の集合体が形成するビジネス世界のシステム全体を俯瞰して見た場合、よほど生存に関わるインフラ事業でない限りは1企業だけが特別に生き残らなければならないという前提やルールはありません。どこかの企業がいなくなっても、需要がある限り必ずそこに代替のプレーヤーが現れます。企業が提供できない需要は、政府によって供給するシステムも社会的に存在しています。

 

 

 

 これは一つの考えですが、我々は「社会で選ばれるために事業をする」のではなく、「自社が社会に貢献した結果、社会から選ばれる」存在を目指したいと思っています。鶏か卵か、みたいな話になってしまいましたが戦略設計上、極めて大事な話だと考えています。そして、こうした発想をベースにスタートしたのが弊社のCSR活動です。

 

 

 <弊社のCSR活動の様子>

 

 初回となる今回は、横浜市の児童養護施設の子供たちと一緒にプログラミング体験をしました。学校や塾といった教育専門の機関ではなく、ビジネスの第一線でプリント基板をはじめとした電子機器を開発している我々だからこそできる活動があると思っています。

 

 

 

 こういった活動は初めてだったので、当初はいろいろ不安もありましたが実行してよかったと思っています。施設の皆様も子供たちも不慣れな我々を温かく迎えてくれ、大変感謝しています。生き残ることが目的なのではなく事業の結果として生き残る会社でいることを改めて考え、そして目的と手段を無意識のうちに混同しないように自分たちの存在意義を見つめなおすこともできたと思います。

 

 

 

 経営戦略の中枢をなす概念に「ドメイン」があります。ドメインとは自社が事業をなす領域の定義です。ドメインは広すぎても狭すぎてもいけないといわれます。広すぎれば戦略がぶれますし、狭すぎれば選択肢が減って変化に対応できません。私は「ドメインとは多角的に見るべきもの」という考えを持っています。特定の視点で自社の事業領域を定義づけるのではなく、大局的にも局地的にもモノをみる目が必要です。とはいえ、実際の目と同じで、思考のピントも簡単には合いません。異なった複数のピントでドメインを設定するのは極めて難しいことです。ですから企業は社会貢献活動のような場を通して、自社のドメインを広くとると良いと思います。今回の活動も、我々が培った力をベースに社会で何ができるかをフラットに考えるとても良い機会となりました。

 

 

 

 CSR活動が企業活動に必須と言われて久しくなります。ビジネスの世界を超えてアカデミックな世界でもCSRと経営パフォーマンスの間の関係については様々な議論がなされていますが、双方には評価手法やドライバー項目が多く、正直両者に正の相関が認められている状況ではないと思っています。CSRというと「環境」をテーマにするイメージが強いですね。もちろん「環境」への取り組みは大変重要ですが、自社の企業能力を社会で発揮するにはどうすればいいか、そういったことを純粋に考える土壌としてCSRをとらえる発想があってもいいと思います。通常の業務では得られないような広い視点でドメインをとらえる一つのきっかけとして社会貢献活動を活用するのは非常にいい手段です。加速度的に進む時代の変化に対応するためには、柔軟にドメインをとらえる必要があり、CSRという分野が次の時代のストラテジーの一つのスタンダードになるといいと考えております。

 

 

 

CSRはその名前の通り、Corporate Social ResponsibilityResponsibility責任」という言葉が伴います。「責任」というと義務感が伴いますがそうではなく、次世代の戦略の中枢を練る場としてCSRがとらえられる時代が来ればいいと思います。そして、我々も小さいながらにそういった社会を目指す一員でありたいと思います。

 

 

 

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。