「企業は投資効率が高い案件から投資する」というのはよく言われる当たり前の話です。
儲かりやすいものから手をつける方が得ということは誰が考えても分かりやすい話ですが、
この話をほんの少しだけ変えてちょっとしたクイズを作ってみました。
お仕事の合間にお時間があれば考えてみてください。
【問題の前提】
A~Hの8つの案件があります。いずれも株式や外貨への投資と言うよりは、本業の投資、
製造業の新製品開発案件への投資案件をイメージしてください。
縦軸の投資効率は案件別の利益率の見込みです。もちろん期待値の値ですが、今回はリスクの話ではないので
案件ごとの利益額と解釈頂いてかまいません。
横軸は投資金額です。Aだけに投資するよりA~Cに投資する方がお金がかかります。
緑の線は企業の営業利益率です。A~Hは本業の投資なので、基本は営業利益をベースに比較します。
茶色の線は資金調達に必要な利子率です。資金調達には自己資本や他人資本の話がありますが、これも今回の
趣旨とは異なるので、銀行から借りた短期借入金の利子率としましょう。
紫の線は企業の期間あたりの投資最小額です。時期によって投資額のボリュームは変わります。
上の絵のようにHまでのときもあれば、もっと多くKやNまであることもあるでしょう。
少なければEやFくらいの時期もあるかもしれません。
トータルで判断したときに少なくともこれだけはあるぞという最低ラインが紫のラインです。
因みに、紫のラインに含まれる投資案件は、必ず黒字案件とさせてください。
前置きが長くなってしまいましたが、是非考えてみてください。
【問題の解答】
早速解答です。
投資金額に制限がないと仮定した時に、利益総額を最大化するために企業が投資すべき案件
答えはA・B・C・D・E・F・Gです。H以外の案件は必ず利益がでますから、利益額自体を
増やすのであれば投資すべき案件となります。
追加の資金調達を行ってでも投資することが望ましい案件
答えはA・B・C・D・E・Fです。案件としては利益が出るのですが、お金を借りて利子を返して
しまうと、Gの案件は赤字になってしまいます。自己資金で投資できるのであれば検討の価値ありですが、
借り手まで手を出す話ではないよねという案件です。
現状の利益体質を向上させるために企業が集中的に投資する案件
答えはA・B・C・Dです。この4つの案件は本業の利益率を上回っていますから、取り組むことで
会社全体の利益率を引っ張ってくれますから是非投資したい案件です。ちなみに、②と組み合わせで
借りてまで集中投資すべき案件かどうか判断したければ、案件の利益率が、緑と茶色の率の合計を
超えるかどうかが判断基準となります。利子を返してもまだ営業利益と同等の利益がでますか?って
考えると分かりやすいかもしれません。
企業が固定費をもって対応することが可能、もしくは好ましい案件
答えはA・B・Cです。ITが加速的にビジネスに導入されて以降、一部で法則は崩れつつあるものの、
固定費は回収できるなら利益率は大きく取れる傾向があり、変動費は利幅は限られますが大損はしないものです。
最近の「固⇒変」の流れに逆行しているととられてしまうかもしれませんが、特に製品開発やそれに伴う
人件費ではまだまだこの傾向は残っているように思います。Dの案件まで固定費で賄おうとすると、
投資最小ラインの紫になってしまったときに損が出てしまいます。
ですからD以下の案件は上手に変動費を利用して利益化していくことが重要です。
【まとめ】
特に製品開発における実際の投資案件においては、単純な期待値だけでなく、案件ごとの取りうる利益の幅に
左右される部分が大きいのですが、どのような判断基準を持つかはさておき、最終的には儲かるかどうかの
判断をしているわけです。
特に、ライフスタイルが多様化し、多品種少量の製品について短期間で損益分岐点を掴む必要がある昨今では、
次の時代の商品開発に全力を投じ、そうではない案件はうまくコントロールする必要があります。
絵の中にもありますが「過去製品のリニューアル」など、既に商品のライフサイクルが衰退期を迎えて
大きな利益が期待できなかったり、残存利益の回収のフェーズになっている商品のEOL対応に固定費をもって
対応することが得策とならないケースは増えているように思います。
当社はそのような企業様のお力になることができます。製品仕様を大きく変えず、簡単な部品変更や基板変更のみ
で対応が可能な場合には是非お声がけ下さい。特に、趣向を変えてドラスティックにコスト構造を変えたいときには
お役に立てるかと思います。
お客様が新製品開発に全力で取り組めるようにサポートさせて頂きます。
もちろん新製品開発に関するご相談もお待ちしております。