さて設計のチェックも完了したら、次の作業に移行します。
当時は「アートワーク」と呼んでいた作業ですが、おそらくその名残りで、
CADを使うようになった今でもアートワークという言葉が
生き残っているのかなぁと(勝手に)思っています。
当時のそれは、まず透明のフィルムにランド(部品ランドや中継VIA)を貼ることから
始まります。
セロテープの上側に丸くて中心に穴の開いたシールが整然と並んでいるところを
想像してみてください。
いやいや、まったくイメージ湧きません、というのが普通かも知れないので、
挿絵をいれようとネットサーフィンしてみましたが
それらしい絵が無かったので、私が適当に絵を描いてみました。
コレ(現代美術展に出展を検討中)
↓
これを設計図面を下敷きにして透明のフィルムに貼っていきます。
一個一個地道な作業ですが、手練れの方であれば1秒に2~3個は貼り付けていきますね。
このシールは透けていましたが真っ赤で光を遮断する素材で出来ていました。
私も設計をする前は、設計を覚えるための下積みとしてその作業をしていました。
自分でいうのもなんなのですが ”結構いけていた” と思うのですけどね。
全てを貼り終えたら、外形枠も光を遮断するテープで作成し、
今度はそれを元に何枚かフィルムに焼きまししていきます。
両面板であれば、表面パターン用、裏面パターン用、そしてレジスト用に3枚。
(SMDは、ほぼない時代でしたのでレジストは共有です)
焼きあがると、それはシールとは違い簡単にははげません。
ただしカッターの刃先で削って消すことは出来ました。
(変更などが入った時は、ゴシゴシ削って、あらたに変更部分の箇所に
丸ランドや信号用のテープを貼ります)
そのフィルムを設計図面の上に敷きにテープで固定して、今度は遮光するごく細の
セロテープのようなもので配線をなぞるように貼りつけていきます。
始めたばかりの方が苦労するのは曲げの部分です。設計図面で配線が曲がっている箇所を
テープで実現するのですが、
曲げたつもりで、しばらくするとテープが浮いてくるのです。
浮いてしまっては、次行程の基板に焼きつけるフィルム作成のとき、
その部分がきれいに転写できません。
かくんっと綺麗にまげて、カツカツと叩いて固定するのですが、熟練者のそれは
とても手際良く、素早いものです。
達人という言葉を使っても過言ではないでしょう。
しかしその達人たちはたいていはパートのおばちゃんです。
そして完成したものを「版下」と呼びました。今でいう基板製造用の”版”を
作製するための元になるものです。
ということで手貼りとは、版を作るための版下と呼ばれるものを作成するにあって
一連の作業をすべて手で貼り付けて作成する事から名づけられています。
いまや死語となってしまいましたが、まれにその単語をきくと若かりし頃を思い出します。
さて今回で手貼りの話は終了です。
大分はしょってしまいましたし、自分の記憶もあいまいで、
さらには「思います」などと適当な説明もあったにも関わらず、お付き合いして頂き、
ありがとうございました。
次回からはCAD設計になってからの自身の失敗談なども織り交ぜながら、
当社設計部の話をしたいと思います。