基板工場に目を向けると、大事な指標の一つとして「良品率」があります。良品率は大事な指標です。投入した商品に対する
良品率の割合で、良品が少ない工程は当然不良を検出できないリスクも上がりますから、この指標は特に重要です。では良品率が
高ければその工程は優秀な工程と判断できるのでしょうか?
良品率の他に、直行率という指標があります。こちらの考え方は以下の通りです。
良品率に似ていますが、少し違いますね。ここで、簡単にですが良品率と直行率の関係性について以下のようにまとめてみました。
シンプルに言うと、良品率について、手直しのない比率を乗じたものが直行率になります。手直しがないというのは、「その工程が
狙った品質の良品を一度で作り上げている」ということです。逆に言うと、良品率の分母には「工程自体では狙った品質の商品を創る
ことができず、イレギュラーな修正によって良品に格上げされたもの」が入り込んでいるということです。
ここに、直行率を見る重要な意義があります。結果的に良品を生み出す能力だけを判断するのであれば良品率だけを見れば十分ですが、
それだけでは高品質なラインと呼ぶことはできません。非手直し率が0%の良品率90%と50%の良品率90%では天と地ほどの差があります。
後者は45%、半分以下の比率でしか一発で良品を作る能力はないのです。直行率が低ければ不良が外にでる可能性もありますし、
手直しの稼働増とうによるコスト増加、検査工程のひっ迫による検査水準の低下のリスクがあり、短期に敵には良品が出ていても長い目で
見ると不良が発生するリスクは大きくなります。ですから、良品率だけでなく直行率も併せて判断することで、高品質な基板を製造するための
本質的な能力はきちんと押さえる必要があるわけです。
上記の指標の考え方や言葉の定義には様々なとらえ方がありますので、計算式自体が大事なわけではなく、あくまでも工程を判断するための
考え方の話として解釈頂ければと思います。
さらに、上記の考え方は、検査が確実にできているという前提の話です。KPIは本末転倒を生み出しがちです。例えば、工場における
工程の評価を上記の良品率や直行率だけにしてしまい、ほかのものは一切評価しないといった極端な状況を考えてみましょう。
趣旨が分かっていない工程担当者は、良品率を上げるために、不良のおそれがあるものを良品と判断してしまうかもしれません。
もしくは不良のおそれがある高難度の仕事を嫌がるようになるかもしれません。KPIの設定と言うのは非常に怖いものです。
一度設定すればそれが定点で評価されていきますから、数字を短絡的に上げるための抜け道がないように指標の意味を、工程担当者に
きちんと説明することが重要です。
例えば、
・不良発生件数0を最重要目標に掲げ、その配下の指標として良品率や直行率を使うといった
指標としての優先度を明確にする。
・KPIを設定する目的や意味を現場の担当者までしっかりと浸透させる。
といった取り組みを恒常的に行ってはじめてKPIの設定は意味のあるものになります。
KPIは工場管理者や経営者が大事に考えている思想を、現場に届けるための重要な伝達方法の一つです。工場に限らず、自分たちで
設定している指標の意味や目的を考えてみるのも大事と言うことですね。